月組ブラック・ジャックに感動した話

 

見る前のテンションとしては、正塚先生とはいえ少しだけ不安な気持ちがあった。初演を知らなかったのと、なんで今ブラックジャック!?という気持ちと、先行画像自分の中のブラックジャック像若干違ったのとで、期待と不安が半々という感じだった。

 

結果、めちゃくちゃ良かった。期待通りというか期待以上の名作だった。

 

月組はギャツビーのチケットが全て無くなったこともあって半年ぶり、それもブエノスアイレスぶりの観劇だったのだが、見てると不安なんか5分で吹っ飛んだ。やっぱりみんな芝居が上手い。

 

出てくる登場人物は、月城かなと演じるブラックジャックをはじめとして皆手塚治虫の作品から抜け出たような出立ちで、ほとんどオリジナルキャラクターなのに「こういうキャラ原作にもいそう」と思わせてくれるキャラクターばかり。

宝塚で見た原作を知っている作品の中でも、かなり高い完成度で、原作の設定やキャラクターを一切壊さずむしろ活かした上で、そのまま宝塚にした作品な気がする。

元々1話完結の漫画なので、新しい作品を作りやすいのはあると思うが、それでも原作の設定をうまく盛り込んだうえで面白いストーリーを作っていてすごかった。

まあ有り体に言ってしまえば、解釈違いが一切なかったのだ。

 

月城かなと演じるブラックジャックは、先行画像の印象は穿った見方だったなと反省するほど間違いなくブラックジャックだった。

宝塚の主人公らしいキャラ造形ではあったが、依頼人に説教するところとかそれでもエゴとわかってお節介を焼くところとかあ〜ブラックジャックだな〜と思う。

月城かなとというタカラジェンヌは、顔の綺麗さが一番に飛び込んでくるはずなのに、どこか偏屈で様子のおかしい男をやらせるととてもハマるタイプだと思っているので、この役はすごく良かった。

 

原作のキャラクターはブラックジャックと回想に出てくる如月恵とあとピノコなのだが、ピノコの登場のさせ方もかなり感動した。

出番こそ少なめだが、電話という掛け合いの中できちんとピノコが重要な役割を果たしていて、原作通りの関係性も感じさせる(それでいてその間に舞台転換をするという演出のうまさ)。「なんだ、今日はずいぶんと優しいじゃないか」とにやけるブラックジャックピノコの会話、良かったな…。

 

オリジナルキャラである海ちゃん演じるアイリスとおだちん演じるケイン。この2人が主軸となって話が進むというのも非常にブラックジャックらしかった。

 

アイリスとケインの痴話喧嘩はどこか生々しく、どんどんヒートアップしてお互い暴走し出すのもリアル。正塚先生の描く人物たちはそれぞれ人間的な弱さを持ち合わせていて、それが丁寧に描写されるから心の動きに違和感がない。

平行線な話をあくまで平行線な話として描いてるのは案外宝塚では珍しいよなと思いながら見ていた。

 

アイリスの硬質で背筋がぴんと伸びた姿は、手塚作品に出てくる女性を彷彿とさせたし、海ちゃんの雰囲気と合っていた。

おだちん演じるケインは流石のセリフ回しで聞くだけで楽しいし、それでいて格好良く不器用な男を見事に演じ切っていた。

 

その他のキャラクターも手塚治虫の作画から抜け出たようで、それでいて個性があり月組の面々はさすがとしか言いようがないほどの芝居でそれを表現している。

こういう芝居を見ると本当に月組のこと好きになっちゃうな。

 

娘役の役が割とあったのもよかった。それぞれのキャラで1話ずつブラックジャックの話作れるよね。

 

 

なんだかとっ散らかった文章になってしまったが、こんなにも「ブラックジャック」でかつ「宝塚」である作品を観れると思ってなかったので、とにかく感動したのだ。

 

は〜正塚先生宝塚に来てくれてありがとう。

そして今の月組でこれを上演してくれてありがとう。

 

 

おわり

 

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